私の母親はいい人なのですが、
料理のセンスが並外れてよろしくない…という残念な欠点があります。
元々の味覚のピントがずれていて、
かなり変わったものを「美味しい!」と家庭の定番に持ってくる傾向がありました。
父と子どもたちはごく通常の「和風好み」味覚であったため、
内心トホホと思いつつ付き合わされていたものです。
そんな母の必殺料理が「ママレード豚」でした。
煮豚をママレードで味付けたもので、
洋風に広いお皿に乗ってくればまだ美味しいのかもしれませんが、
白飯・味噌汁とは実に合いません。
ですからママレード豚が出て来る日は、父と子は恐々としていたのです。
これは美味しい!紅茶豚
大人になり、家を出た私は実家以外の様々な料理を味わって行きました。
とある料理上手な知人の所でお昼をごちそうになった際、
シンプルな感じの煮豚の薄切りがでてきました。
しょうゆ甘酢でマリネされたとおぼしきその深いうまみに
「こりゃ美味しい!」と驚き、
「簡単なのよ」とレシピを教えてもらってさらに驚きました。
紅茶で煮込んだ豚、紅茶豚だと言うのです。
ママレード豚の辛い記憶が脳をよぎりました。
和風の食材とはおよそかけ離れた点において、
紅茶とママレードは共通しています。
それでも紅茶豚は恐ろしくご飯のすすむ味であり、
「ありだ、絶対にありだ!」と呟きながら完食したのです。
簡単で経済的、しかも時短効果の紅茶豚
教えてもらった紅茶豚の作り方は、
いたって簡単でした。
大きな鍋にお湯を沸かして、
紅茶のティーバッグ2-3点を放り込み、
お茶を煮だします。
次に豚肉の塊肉を入れて、
浮いて来る灰汁をとりながら
(大きさにもよりますが)1時間ほど煮込むというものでした。
煮込みが完了したら、
甘酢やしょうゆ、ポン酢など、好きなマリネ液に漬けて一晩おくだけで完成です。
薄切りにしたものをそのまま食べてももちろん美味しいのですが、
細かく刻んでチャーハンやお茶漬け、
卵焼きや炊き込みご飯の中に入れても、とてもおいしくいただけます。
大きなかたまり肉で作って、
毎回バラエティをきかせながら食べ続けることができるので、
経済的で時短効果も高い、といえるでしょう。
常備菜づくりに悩んでいる人には特におすすめの一品です。
紅茶で煮込むことで、
硬くなりがちなお肉もやわらかく仕上げることができ、
漬け込み後もパサつきません。
考えた人はすごいなあ、と作る度に感心しています。
私はルイボスティーで豚肉を煮込んでみたこともありましたが、
同様のやわらか効果があり、味に変化はほとんどありませんでした。
もともと紅茶の香りはマリネ液に消されてなくなってしまうので、
ごく安いティーバッグなどを使うのがよいと思われます。
ちなみにこの紅茶豚の話を母にした所、
「やっぱり、付け合わせはママレードやジャムをベースにしたソースがいいのかしらね?」
とはしゃいでおり、苦笑いたしました。